マス・メディアの限界を踏まえた上で、インターネットや小さなメディアを作り上げることで自分たちの意見や気持ちを表現していこうとする世界の実践例を紹介していきます。
包摂型メディア実践全般
コミュニティFMにおける包摂型番組例 (Japan)
http://inclusive-media.net/note-05/1.html
日本のコミュニティFMにおける社会的弱者を対象にした包摂型番組の一覧。社会福祉協議会や国際交流協会などとの共同で制作される番組も多い。想像を超える多様な番組が日本にあることに感激。アイディアをぜひ参考にして欲しい。
三角山放送局 ( Sapporo, Japan)
「社会に向けて何かを言いたいひとだけがマイクの前に立つ」ことを目標とする札幌市のコミュニティFM局。その意志がある人にはあらゆる応援をして,身体障害や視覚障害のある人も番組を担当。札幌刑務所の受刑者からメッセージとリクエストを募る番組も制作、地域に放送。
バリアフリーバラエティ バリバラ (Osaka, Japan)
http://www6.nhk.or.jp/baribara/index.html
2012年にスタートした「障害者のための情報バラエティ」。これまでタブー視されてきたテーマに切り込み、笑いを重視したバラエティとして構成し、放送している。2016年からは障害のある人に限らず、「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティ」を対象に、LGBTや震災などにも焦点を当てている。
メディア・コンテ (Nagoya, Japan)
障害を持つ方や戦争体験、外国籍のこどもたちが自らの声と写真で表現したデジタル・ストーリーテリングの実践と作品のサイト。
NPO法人 こえとことばとこころの部屋 cocoroom (Osaka,Japan)
https://cocoroom.org/%E3%82%B3%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%81%AF/
生きることは表現、をテーマに、釜ヶ崎周辺の様々な人たちが出会い、分野横断的に様々な表現を行うことを企図した活動を展開している。
ケアメディア推進プロジェクト
http://www.caremedia.link/index.html
ケアを理解する関係者と当事者が作り、発信するプロジェクト。表現活動を初め、ジャーナリスティックな視点から情報誌も発行している。
テーマ別:高齢者とメディア
ヴィンテージ・ラジオ Vintage Radio (Wirral, England)
http://www.vintageradio.org.uk/index.php/vr/about-vintage
「高齢者による,高齢者のためのラジオ番組を作る。」をテーマに、高齢者の声を伝えるラジオとして2008年に設立。「成熟したリスナーによる番組」を放送し、昔のことなどを語り合う中から、高齢者がコミュニティと関係を保ちつつ生きていくことを提案している。
天草テレビ アナウンサールーム (Nagasaki, Japan)
http://www.amakusa.tv/newscas.html
- 「天草テレビ 女子アナはおばあちゃん ―老後を変えたインターネット」
天草弁が堪能であり、豊富な知識と経験を持つ高齢女性たちがケーブルテレビのアナウンサーを務めていることで話題となった。インターネットを介して、世界とつながる経験をしたおばあちゃんたちの記録は電子書籍化もされている。
「介護民俗学へようこそ 「すまいるほーむ」の物語」 (Shizuoka, Japan)
新進気鋭の民俗学者から施設介護職員へ。六車由実による、施設での高齢者への「聞き書き」による物語が介護の現場を変えていく。「驚きの介護民俗学」とともに、高齢者の経験が物語としてシェアされることによる現場の効果を論じた書籍。
NHK認知症プロジェクト(Tokyo, Japan)
http://www.nhk.or.jp/ninchishou/
認知症をめぐる情報サイト。文字情報から関連動画まで認知症を疑ったら一度見て見る価値があるかも。
テーマ別:障害者とメディア
のヴァてれび (Shizuoka, Japan)
http://cslets.net/hotnews/news-811
スタッフの力を借りつつ、障害のある方(のヴァてれびクルー)が動画の撮影、編集、出演をするきわめてユニークなYou Tube放送局。認定NPO法人クリエイティブサポートレッツが運営するユニークで自由な障害福祉サービス事業所ars novaの日常を映像化し、公開している。レッツの活動はきわめて表現志向でメディア的。
- クリエイティブサポートレッツ
ここリカ・プロダクション (Sapporo, Japan)
http://www.kokoro-recovery.org/kokopro/
精神障害を持つ人などのための就労継続支援B型事業所。講義や講演のほか、映像製作や広報などを請け負う。また、FM白石で番組「つながるここプロラジオ」を担当。
パンジーメディア (Osaka, Japan)
知的障害を持つ人たちに対する差別や偏見、虐待などをなくすためには、その状況や暮らしについて知らせていくことが必要だとして、映画や本などを作成し、インターネット放送局を開設して新しい番組を放送している。
さがの映画祭(Kyoto, Japan)
http://www.com-sagano.com/archives/category/event/eizo
聞こえないという障害を超えた映像文化「デフ・ムービー」の世界が静かに広がっている。さがの映像祭は、聴覚障害者が撮影した映像のコンテストを行ったり、ワークショップを行ったりして普及を進めている。
Radio La Colifata (Buenos Aires, Argentina)
1990年設立。精神保健のサービスを提供する非政府組織を中心に、精神障害を抱えた人々がラジオ番組を作り、各地のラジオ局で放送する試み。
現在では同モデルに従い、ラテンアメリカやヨーロッパ、アジアにも同様のプログラムが普及しているという。
テーマ別:患者とメディア
患者の声 Patient Voices (Landbeach, England)
https://www.patientvoices.org.uk/
さまざまな病をめぐる患者の経験、医療に携わるものが日々感じる経験、大事な人を亡くした経験などが、デジタル・ストーリーの様式で記録されている。(参考文献:小川明子(2016)『デジタル・ストーリーテリング 声なき想いに物語を』)
ホスピタル・ラジオ協会 (London, England)
英国には現在、200近い病院に「ホスピタルラジオ」がある。これは、1930年代から60年代にかけて普及したちいさな院内ラジオであり、どこもボランティアによって運営されている。多くがベッドサイドのイヤホンで聞く仕組みになっており、ボランティアが病室にリクエストカードを集めにいき、中には家族や友人からのメッセージや患者から医療スタッフへのメッセージを伝える番組もある。局によって運営はさまざま。詳細はホスピタルラジオ報告(小川,2018)を参照。
Dipex Japan (NPO法人 健康と病の語り)(Tokyo, Japan)
病気の診断を受けた人やその家族が、同じような経験をした人たちの「語り」に触れて、 病気と向き合う勇気と知恵を身につけるために作られたウェブサイト。診断時の想いや、治療法の選択、副作用の経験などがさまざまなメディアによって語られる。
チーム闘病記 (Osaka,Japan)
http://sksp.biz/toubyouki.html
闘病記を書きたいという人を支援するプロジェクト。これまでに闘病記制作に関わった編集者やデザイナーが企業の枠を超えて支援を試みる。
テーマ別:更生とメディア
刑務所ラジオ 「730 ナイトアワー」 (Toyama, Japan)
- 朝日新聞DIGITAL「一筋の光明を」富山刑務所の住職DJ、放送400回
毎月一回、午後七時半から九時まで富山刑務所内のスタジオで受刑者向けに放送される番組。清源禅寺住職の川越恒豊さんが33年間続けている。他に、府中、和歌山、福岡でも同様の放送が続けられている。札幌刑務所では三角山放送局と提携して番組を制作、地域社会に向けても放送している。
「刑務所のストーリー」 DIGITALSTORYLAB (Copenhagen, Denmark)
http://digitalstorylab.com/cases/faengselshistorier/
受刑者、元受刑者とのワークショップ。公開するデジタル・ストーリーを制作することでこれまでの経験を振り返り、出所後の生活についても考える契機を与えるプロジェクト。
全英刑務所ラジオ Prison Radio Association(London, England)
再犯を防ぐことを目的に、1994年に英国フェルタムで設立されたラジオを起源とし、現在では76%の受刑者が聞き、37%が毎日聞いている。リクエストやメッセージは、受刑者だけでなく、受刑者の家族や友人からも届けられるという。
テーマ別:LGBTとメディア
虹ステーション (Osaka, Japan)
https://www.youtube.com/watch?v=yN79m32R9cs&t=
誰もが生きやすい社会づくりを目指して、LGBTに関する情報を伝えていくYou Tubeチャンネル。
テーマ別:難民とメディア
難民ナウ!(Kyoto,Japan)
世界で最も深刻な問題の一つでありながら, 日本では伝わりにくい難民の問題を繰り返し放送することで地域コミュニティの中で見えるようになることを目指した京都三条ラジオカフェで放送される6分間のラジオ番組(2004年2月から毎週土曜日19時から放送)。